「せっかく採用した若手が、すぐ辞めてしまった」。経営者さんから、本当によく聞くお悩みです。
若手がすぐ辞めると、「給料が足りなかったのか」「根性がないのか」と考えがちです。でも私は、もっと手前に理由があることが多いと感じています。
若手がすぐ辞める理由は「想像と違った」
辞めた理由を聞くと、「なんとなく合わなかった」という答えが返ってくることがあります。この「なんとなく」の正体は、多くの場合「想像と違った」です。
仕事の中身、一日の流れ、職場の空気、人との距離感。入社前に思い描いていた姿と、実際の毎日にズレがある。そのズレが小さな違和感として積み重なり、ある日「辞めます」という言葉になります。
給料や休日は、求人票に書いてあるので入社前に分かります。分からないのは、書かれていない部分です。つまり若手が辞める理由の多くは、会社が伝えていなかったことの中にあります。
ギャップは、良く見せようとするほど大きくなる
採用の場面では、どうしても会社の良いところを並べたくなります。気持ちはとてもよく分かります。
でも、良いところだけを見せて入社してもらうと、入社後に見える「それ以外」がすべてギャップになります。朝が早い。覚えることが多い。夏の現場は暑い。最初は怒られることもある。こうした事実は、隠しても入社すれば必ず分かります。
私はデッサンの考え方が好きです。輪郭だけをきれいになぞった絵は、どこか平面的です。影もしっかり描き込むことで、はじめて立体的な姿が浮かび上がります。会社も同じで、大変なところまで正直に描いたほうが、本当の姿が伝わります。
大変なことを知った上で「それでもやってみたい」と入ってくれた人は、想像と現実のズレが小さい。だから、すぐには辞めません。
入社前に「毎日」を見てもらう
ギャップを小さくするいちばんの方法は、入社前に実際の職場を見てもらうことです。
私たちが運営している建設現場の1日体験「KIZUKU」でも、受け入れ企業の方からこんな声をいただきました。「面接より先に現場を見てもらうことで、入社後のギャップがなくなった」。
参加した学生さんからも「現場事務所での仕事や雰囲気を知ることができた」という声がありました。求人票や面接では伝わらない「空気」は、その場に来てもらうのがいちばん早いんです。
入社後の「想像と違った」を、一人で抱えさせない
どれだけ丁寧に伝えても、入社後のズレをゼロにはできません。大切なのは、ズレを感じたときに口に出せる環境です。
私も初めての現場では、分からないことだらけでした。それでも毎日現場に行き、挨拶をして、職人さんと言葉を交わし続けました。関係ができてくると、困ったことも相談できるようになります。
新人にとって「聞いていいんだ」と思える相手がいるかどうかは、とても大きいです。上司でなくても、年の近い先輩でもかまいません。
「最近どう?」の一言でいいんです。忙しい現場ほど、新人は遠慮して声を上げられません。だからこそ、まわりから先に声をかける。その小さな積み重ねが、「ここにいていいんだ」という安心につながります。
今日からできること
- 「大変なこと」を求人票や面接で正直に伝える:朝の時間、覚えること、季節ごとのきつさなど。あわせて、それを乗り越えた先にある面白さも書いてください。
- 応募者に職場を見てもらう機会をつくる:見学でも、半日の体験でもかまいません。面接の前後に、実際に働く場所と人を見てもらいましょう。
- 入社1か月以内に「想像と違ったこと」を聞く:責めるためではなく、知るための質問です。答えは、次の採用の求人票にそのまま活かせます。
まとめ
若手がすぐ辞める理由は、給料よりも「想像と違った」にあることが多いです。良いところも大変なところも、ありのままに伝える。それが、辞めない採用のいちばんの近道です。
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